INTERVIEW

2026.10.21

航空をまとう、その思想を聞く

ESMONTへの7つの質問——ロンドン×鯖江のものづくりを引き出すQ&A企画

ロンドンで構想し、鯖江で手づくりする。

航空の歴史をまとうESMONTの思想は、つくり手の言葉でこそ深く伝わる。そこで本記事は、ブランドへのQ&Aをもとに構成する。以下は、お送りする質問項目だ。

Q1. 「航空の世界」をブランドのインスピレーションに据えた理由を教えてください。

私は昔から航空の世界に強く惹かれてきました。ただ、それは製品に航空を無理に取り入れようとしたというよりも、私自身のデザインに対する考え方を形づくる個人的な情熱だったと言えます。

航空の世界には、実在する機体やミッション、歴史的な出来事があり、それぞれに語るべき物語があります。実在する航空機、実際のミッション、そして歴史の中で意味を持つ出来事。その一つひとつがストーリーになっています。

Habu、Blackbird、Apollo 11――それぞれのコレクションは、そうした物語にちなんで名付けられ、その精神性をデザインに反映しています。

航空は製造技術を主張するためのものではなく、あくまでも創造の源です。私たちはアイウェアブランドですが、航空の世界は、このカテゴリーの中でも他にはない独自のストーリーを語るための手段を与えてくれました。

Q2. ロンドンで構想し、日本・鯖江で手づくりするという体制を選んだ背景を教えてください。

私は以前から日本の文化や伝統に深い敬意を抱いていました。そのため、アイウェアを製造する場所として日本を選ぶことは、ごく自然な決断であり、誰かに勧められたからではありませんでした。

特に鯖江には、何世代にもわたってアイウェアづくりを受け継いできた家族経営の工房があります。その卓越した技術は、世界中どこでも見つかるものではありません。

実は最初は他の地域も検討しました。しかし最終的にたどり着いた答えが鯖江だったのです。

ロンドンはブランドとデザインが生まれる場所。鯖江はそれを実際に形にする場所。それぞれ異なる強みを持っているからこそ、どちらかを妥協するのではなく、両方を選びました。

Q3. チタンを17回プレスし、300工程・18か月をかけるものづくりのこだわりを教えてください。

300工程とは、製品が工房を出荷されるまでに300もの異なる製造・検査工程を経るという意味です。

すべての表面を確認し、すべてのパーツを検査し、一つひとつの工程が承認されて初めて次の工程へ進みます。

これはマーケティングのために掲げている数字ではありません。実際の製造工程に必要な工程数なのです。

18か月という製作期間も同様です。長い納期を演出するために完成品を保管しているわけではありません。本当に完成まで18か月を要します。そして、その期間を短縮しようとすれば、製品の品質そのものが変わってしまいます。

私たちにとって重要なのは、一貫した品質を提供し、販売店の皆様に安心して取り扱っていただけることです。どの一本も同じ工程を経て、同じ基準で検査され、変わらない品質で仕上げられています。

Q4. 製品を「眼鏡」ではなく「アイピース(eyepieces)」と呼ぶことに込めた意味を教えてください。

私にとって「アイピース」という言葉は、従来のアイウェアとは少し異なるカテゴリーを表しています。

単に視力を補うための製品ではなく、デザインと構造の両面に明確な意図を持ってつくられたプロダクトである、という考えを表現しています。

言葉としては小さな違いかもしれません。しかし、その違いこそが、最初のデザイン段階から製品づくりに向き合う私たちの姿勢を表しているのです。

Q5. SR-71から生まれた「Habu」やApollo計画にちなんだモデルなど、機体や史実をモチーフにする際に大切にしていることは何でしょうか。

私たちが最も大切にしているのは、まず歴史を正しく理解すること。そして、その精神をデザインへ落とし込むことです。

例えばSR-71 Blackbirdは、1960年代初頭に極秘裏に開発された航空機でした。追撃機が追いつけないほど高く、そして速く飛び、1998年に退役した現在でも、その後継機は存在していません。

その歴史は明確な事実として記録されています。私たちはその航空機をそのまま模倣するのではなく、SR-71が持っていた精密さや無駄のない美しさという精神をデザインで表現したいと考えました。

Apollo 11はまた異なる存在です。あの計画には数十万人もの人々が携わりましたが、その多くの仕事は世間の目に触れることはありませんでした。

私たちは、「誰にも見られていなくても、高い基準を守り続ける仕事」という考え方に共感し、その精神をコレクション名に込めています。

私たちにとって最も重要なのは、そのストーリーが実際の歴史に基づき、十分に調査されたものであること。そしてデザインが単に見た目を真似るのではなく、その精神を表現していることです。

Q6. 実機の破片を封入する「ARTIFACT EDITIONS」は、どのように生まれた発想でしょうか。

これは、アイウェア業界ではこれまでほとんど例のない挑戦をしてみたいという思いから生まれました。

私たちは、それぞれの作品に単なる名前だけではない、本物の物語を持たせたいと考えました。実際に存在し、証明できる歴史を形として製品に宿したかったのです。

ARTIFACT EDITIONSでは、実在した航空機から採取された認証済みの素材を使用しています。

それぞれのモデルには、その航空機の正式名称、運用履歴、飛行した場所、退役した時期などを記した証明書が付属し、その素材は製造工程の中でアイピースへ組み込まれます。

各エディションは一度限りの限定生産です。決められた数量が完売すれば、同じエディションが再び製造されることはありません。

Q7. 「受け継ぐための眼鏡」という価値を、これからのオーナーにどう伝えていきたいですか。

この点については、誠実にお伝えしたいと思っています。

どんな製品でも永遠に使えると約束することはできませんし、そのような約束は誠実ではありません。

私たちにできるのは、確かな品質で製品をつくり、適切なアフターサービスを提供することです。

そのためESMONTでは、点検・クリーニング・調整などのメンテナンスサービスをご用意しています。適切にお手入れしていただければ、アイピースは非常に長くお使いいただくことができます。

私たちが使用する素材の品質と、継続的なサポート体制。この二つが組み合わさることで、買い替える消耗品ではなく、何年にもわたって大切に使い続けられる一本になる可能性が生まれるのです。

こちらの方が現実的で価値のあるストーリーだと考えています。

「永遠に使える」と約束することではなく、高い品質基準でつくられ、確かなアフターケアによって長く愛用できる製品であること。それが私たちの伝えたい価値です。

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