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四世代が受け継ぐ、パリのものづくり

1923年。パリ8区、マドレーヌ地区。
ヴィニョン通り11番地に、一軒の小さな眼鏡店が生まれた。 創業者ルイ・ラフォンが開いたそのブティックは、今から100年以上前のことだ。
大手コングロマリットが業界を席巻し、独立ブランドが次々と買収されていくなかで、 LAFONTは一族経営を守り続けた。 買われることも、妥協することも、なかった。
なぜ、生き残れたのか。 答えは数字ではなく、「色」にある。

「転機は、一人の女性の登場だった」
2代目のジャン・ラフォンの時代、LAFONTは初めてオリジナルコレクションを発表する。
だが、ブランドが世界へと飛び出すきっかけとなったのは、80年代のある出来事だった。
3代目フィリップの妻、ロランス・ラフォン。
もともとテキスタイルデザイナーだった彼女が、夫のためにデザインしたコレクションが世界を驚かせた。
パリにしか生まれえない洗練と遊び心——その才能に、世界中からすぐに反応が届いた。
2012年、ロランスが他界する。彼女のアシスタントとしてずっと傍で学んできた息子、トーマとマチューが4代目に就任した。DNAは、確かに引き継がれた。

「布地から生まれる、パリの色」レース、ドット、幾何学模様。
フランスの伝統的なテキスタイルやアール・デコのエッセンスが、フレームとテンプル(つる)に、繊細に、しかし確かに宿っている。
毎シーズン発表されるコレクションのうち、3割は新色だ。
生地もメタルパーツも、毎回独自のカラーリングが施される。
これだけの色をつくり続けられるブランドは、そう多くない。そしてシェイプにも、LAFONTらしさがある。
キャットアイをはじめ、女性のフェイスラインと目元をすっきりと、知的に、エレガントに見せるレンズの形。
芯がありながら遊び心を忘れない——大人の女性のためのスタイルが、ここに確立されている。
「すべては、このスタジオから生まれる」
パリ郊外の閑静な住宅街に、LAFONTの本社はある。
デザインスタジオに足を踏み入れると、まず壁が目に飛び込んでくる。イメージ写真、手書きのメモ——チームが日夜ブレインストーミングしてきた痕跡が、隙間なく貼り付けられている。
本棚には分厚い美術書と専門書。棚には色見本の布生地、セル生地、リボン、ボタン。
そして隣の倉庫には、ランプ、鳥かご、花瓶、額縁、木片、植物モチーフのオブジェ——
大小さまざまな「美の欠片」たちが、静かに出番を待っている。
雑然としているようで、どれもちゃんと「何かになりそうな気配」を持っていた。
LAFONTの色と形は、数字やトレンド分析からではなく、この空間に積み重なった美への眼差しから生まれている。

「スタイルに妥協しないパリジェンヌが、教えてくれる」新しいアイデアが浮かぶのは、朝だという。
パリがまだ静かで、でもどこかエネルギーが動き始めている——
その時間を、デザイナーでもあるトーマ・ラフォン氏は大切にしている。
「パリの多様性と美しさは唯一無二です。この街で暮らせることに、心から感謝している。スタイルに妥協しないパリジェンヌの生き方が、いつもインスピレーションを与えてくれます」
テンプルには、代々、家族の名前が刻まれている。
だからこそ、クオリティを妥協することは家名への裏切りだ。
ファミリーが積み上げてきたものを継承することが、仕事の原動力だとトーマ氏は言う。
100周年を迎えた今も、ゴールはずっと先にある。
「いつか200周年を、盛大に祝いたい」——
その言葉に、重みも気負いもなかった。ただ、静かな確信があった。